はじめに:スマホやタブレット、子どもにどう使わせていますか?
最近では、2〜3歳のうちからスマホやタブレットを使いこなす子どもも少なくありません。
「ちょっと静かにしていてほしいとき」「自分の時間が欲しいとき」など、ついデジタル機器に頼ってしまう…そんな経験、ありませんか?
私たち親の世代にとっては、子どもの頃にはなかったスマホやタブレット。
どう向き合えばいいのか、どこまでOKで、どこからが心配なのか──はっきりとした「正解」がないからこそ、悩む方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、
- 子どもの「脳の成長」に関わる重要な部分「前頭前野(ぜんとうぜんや)」とは何か
- スマホやタブレットの使いすぎが、子どもの心と脳にどう影響するのか
- デジタルデトックスの必要性と、家庭でできる具体的な工夫
- そして筆文字や写経など、アナログな時間がもたらす深い効果
について、できるだけわかりやすく、日常に役立つ形でお届けします
「スマホをやめさせなきゃ」と肩に力を入れなくても大丈夫。
親子の暮らしの中に、“少しだけ”デジタルから離れる時間をつくることが、子どもの心と脳にとって、何よりのプレゼントになるかもしれません。
第1章:前頭前野ってなに?子どもの脳の司令塔
子どもが育つ中で、「脳の発達」はとても大切なポイントです。特に注目したいのが、脳の前の方、おでこの裏側あたりにある「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部分。
この「前頭前野」は、私たちが考える・集中する・感情をコントロールするといった、人としてとても大事な働きをする場所なんです。よく「脳の司令塔」とも呼ばれます。
前頭前野が担う主な働き
機能 | 説明 |
---|---|
思考力 | 物ごとをじっくり考えたり、計画を立てたりする力。 |
集中力 | ひとつのことに意識を向け続ける力。 |
判断力 | 何が良くて何が悪いかを見分ける力。 |
感情のコントロール | 怒ったり泣いたりしたときに、気持ちを落ち着かせる力。 |
我慢する力 | 「今すぐやりたい!」をこらえる力。 |
子どもの前頭前野は「育ち途中」
前頭前野は、生まれたときにはまだ十分には働いていません。実は、この部分は10歳ごろまでにぐんぐん発達しはじめ、大人になるまでゆっくりと育っていくと言われています。
特に、幼児期〜小学生の間は、前頭前野の発達にとってゴールデンタイム。この時期に、いろんな経験を通して「考える力」や「我慢する力」を育てていくことがとても大切です。
前頭前野がしっかり育つと…
- 怒っても、自分で気持ちを切り替えられる
- 落ち着いて話を聞ける
- お友達とけんかしても、話し合いで解決できる
- 集中して勉強や遊びに取り組める
こんなふうに、「心の成長」や「社会性」と深く関係しているんですね。
第2章:スマホやタブレットが前頭前野に与える影響
最近は、2〜3歳の小さな子どもでもスマホやタブレットを使いこなす姿を見ることがあります。
YouTubeやアプリで楽しそうに遊んでいると、「静かにしてくれて助かる」と思う反面、「このままで大丈夫かな?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
実は、スマホやタブレットの使いすぎは、前頭前野にとって少し注意が必要なんです。
デジタル機器は「刺激が強い」
スマホやタブレットでは、画面の中で色や音が次々に変わります。
動画やゲーム、アプリは「楽しい!」「もっと見たい!」と思わせるように作られているため、脳にとってとても強い刺激になります。
この強い刺激が続くと、前頭前野が“考える”前に、脳が勝手に反応してしまうクセがつきやすくなります。
「すぐにごほうび」がもらえる環境
スマホやタブレットでは、タップするだけで動画が始まったり、ゲームでポイントがもらえたりします。
つまり、何か行動すると、すぐに「ごほうび」がもらえる仕組みです。
この「即時のごほうび」が当たり前になると、
- 待てない
- がまんできない
- すぐにイライラする
といった傾向が強くなることがあります。
これは、前頭前野の「我慢する力」「感情をコントロールする力」がうまく働きにくくなるからです。
長時間の使用は「脳の疲れ」に
デジタル機器を長時間使うと、前頭前野がずっと働きっぱなしになり、休む時間がなくなってしまいます。
その結果、
- 集中力が続かない
- 落ち着きがない
- ぼーっとする
- 感情の起伏が激しい
といった“脳の疲れ”によるサインが出ることがあります。
一見、スマホやタブレットを楽しんでいるように見えても、実は脳がクタクタになっているかもしれないのです。
第3章:今注目されている「デジタルデトックス」とは?
スマホやタブレットを長時間使い続けると、脳が疲れてしまう──。
特に、まだ発達途中の子どもにとっては、その影響が大きいことがわかってきています。
そこで、最近注目されているのが、「デジタルデトックス」という考え方です。
デジタルデトックス=脳と心の“おやすみ時間”
「デトックス」とは、もともと“毒を出す”という意味。
「デジタルデトックス」は、スマホやタブレットなどのデジタル機器から意識的に離れて、脳と心を休ませる時間を作ることを指します。
大人の間でも実践する人が増えてきていますが、これは子どもにもとても効果的。
特に前頭前野を休ませるために、とても有効な方法なんです。
こんな時、脳は喜んでいます
子どもにとってのデジタルデトックスは、決して「我慢させる」「楽しみを取り上げる」ことではありません。
別の形で「楽しい」「気持ちいい」「落ち着く」体験をすることが、脳のリセットにつながります。
たとえば…
- 外で遊ぶ
- 本を読む
- 絵を描く・ぬり絵をする
- 手を使って何かを作る(折り紙、粘土、工作)
- ゆっくりおしゃべりをする
- お昼寝する
こうした活動は、どれも前頭前野にとって“やさしい刺激”で、過剰に働きすぎた脳を癒してくれます。
デジタルデトックスは「ちょっとずつ」でOK!
「1日中スマホ禁止にしなきゃ!」と思うと、親も子どももストレスになります。
大事なのは、毎日の生活の中に“少しだけ”デジタルと距離を置く時間を作ること。
たとえば…
- 朝の10分だけ画面なしタイム
- 夜寝る前はスマホを見ない
- 食事中はスマホをテーブルに置かない
そんな小さな工夫が、前頭前野を守り、子どもの「心の安定」にもつながるのです。
次の章では、こうしたデジタルデトックスを家庭でどのように実践できるかを、もっと具体的に紹介していきます。
親子で一緒に楽しく取り組める工夫もご紹介しますね。
第4章:家庭でできる!子ども向けデジタルデトックスの方法
デジタルデトックスは、特別なことをしなくても、家庭の中で“ちょっとした工夫”をするだけで始められます。
ポイントは、「やめさせる」のではなく、「楽しい時間を一緒に作る」ことです。
ここでは、すぐに取り入れやすい具体的な方法をご紹介します。
1. 「画面タイム」にルールを作る
まずは、子どもがスマホやタブレットを使う時間や場所にルールを設けることが大切です。
無理のない範囲で、親子で一緒に決めるとスムーズですよ。
画面タイム例
- 平日は1日30分まで
- 食事中・寝る前は使わない
- リビングで使う(ひとりきりにしない)
こうしたルールをあらかじめ決めておくことで、子どもも「なんとなくダラダラ使う」ことが減ってきます。
2. 親も一緒に「ノーデジタルタイム」
子どもだけに我慢させるのではなく、親も一緒にスマホを置く時間を作ると、子どもは自然と受け入れやすくなります。
おすすめタイミング例
- ごはん前の15分
- おやつタイム
- 夜寝る前の30分
- 休日の朝の1時間 など
一緒にテレビやスマホを消して、会話をしたり、絵本を読んだり、ゆったり過ごす時間を大切にしましょう。
3. デジタルの代わりに「手を使う遊び」を提案
デジタルデトックスのカギは、「画面以外で満たされる時間」を持つこと。
特に、“手を使って何かをする遊び”は、前頭前野をやさしく刺激してくれます。
手遊び例
- お絵かき・ぬり絵・折り紙
- 粘土や工作
- お菓子づくり・簡単な料理
- お手伝い(洗濯たたみ、野菜の皮むき)
- 一緒にお散歩・自然の中での遊び
これらは、脳をリラックスさせると同時に、親子のコミュニケーションにもつながります。
4. 曜日で「おやすみデー」を決めるのも◎
たとえば「日曜日はノースマホデー!」と決めて、家族みんなでデジタルから離れて過ごす日を作るのもおすすめ。
ピクニック、公園、図書館など、デジタルに頼らないお出かけをしてみましょう。
このように、無理なく・楽しみながら取り組める工夫を取り入れることで、子どもの前頭前野を守りながら、心の安定や集中力も育てていくことができます。
第5章:筆文字や写経がもたらす、心と脳へのやさしい効果
スマホやタブレットから離れて過ごす「デジタルデトックス」の時間。
その中でも特におすすめしたいのが、「筆文字」や「写経」のように、“ゆっくり手を動かして文字を書く”活動です。
一見、大人の趣味のように思えるかもしれませんが、実はこれ、子どもにも大きな効果があるんです。
手でゆっくり文字を書くこと=前頭前野への“ごほうび”
前頭前野は、「考える」「集中する」「感情をコントロールする」など、人間らしい行動を司る部分でしたね。
筆文字や写経のような活動には、以下のような脳への良い刺激が含まれています。
✅ 集中力が高まる
筆で文字を書くには、丁寧に手を動かす必要があります。
この「一点に集中する」時間が、前頭前野を活性化し、集中力を育てる効果があります。
✅ 感情が落ち着く
ゆっくりとした筆の動きと静かな環境は、自然と心を落ち着かせます。
これは、写経や筆文字が「マインドフルネス(今ここに集中する心の状態)」にも近いと言われるゆえんです。
✅ 自己コントロール力が育つ
墨をつけすぎない、紙からはみ出さないように書く、など「ちょっとしたがまん」や「工夫」をする場面が多く、自分をコントロールする力=前頭前野の力が鍛えられます。
親子で一緒に取り組むと、もっと効果的
ご自身がされている筆文字・写経講座のような場で、親御さんがリラックスして筆を走らせる姿を見ると、子どもも自然と「やってみたい!」という気持ちになります。
親子で一緒に楽しめる点も、大きな魅力ですね。
また、お子さん向けには「好きな言葉を筆で書いてみよう」「ひらがなを大きく書いてみよう」など、遊び感覚で取り入れると、よりスムーズにスタートできます。
実際の講座で見られた子どもたちの変化
- 落ち着きがなかった子が、30分間じっと筆に集中できた
- 「もっとやりたい!」と自分から取り組む姿勢が出てきた
- 書いた文字を大事そうに見つめ、自信がついた様子が見られた
- 姿勢が整い、呼吸もゆっくりに変わっていた
このように、「デジタルでは得られない深い集中」と「心の静けさ」が、筆文字や写経には詰まっています。
筆文字・写経は、現代の子どもにぴったりな“癒しの時間”
デジタルな世界は便利で楽しい反面、どうしてもスピードが早く、刺激が強いです。
だからこそ、アナログで、ゆっくり、静かに向き合う時間は、子どもにとってかけがえのない心の栄養になります。
親御さん自身も「ちょっと疲れてるな」「スマホばかり見てるな」と思ったら、ぜひ一緒に筆をとってみてください。
それが、家族みんなの“デジタルデトックス”につながっていきます。
おわりに:スマホと上手に付き合う子に育てるために
今の子どもたちは、「生まれたときからスマホやタブレットがある時代」に育っています。
もはやデジタル機器を完全に避けて通ることはできませんし、うまく使えば学びや遊びの幅が広がる、素晴らしい道具でもあります。
だからこそ大切なのは、「付き合い方」を親が考え、子どもに伝えていくことです。
デジタル=悪ではない。大切なのは“バランス”
「スマホは悪い」「ゲームは禁止」と厳しくするのではなく、
子どもの脳や心を守るために、“休む時間”や“アナログの体験”を意識して取り入れることが、今の時代に必要な子育ての知恵です。
子どもは、まだ自分でバランスを取ることができません。
だから、まずは親がデジタルとの付き合い方を見せてあげることが、何よりの教育になります。
ゆっくり、丁寧に、心を整える時間を
この記事で紹介してきたように、前頭前野という脳の大切な部分を育てるには、急がず、じっくりと向き合う時間が必要です。
そのためには、
- スマホを見ない時間をつくる
- 外遊びや手を使った遊びを取り入れる
- 筆文字や写経のように「静かな集中」を味わう時間を持つ
といった日々の小さな習慣が、大きな土台になっていきます。
親子で一緒に、“整える”暮らしを
あなたの言葉や行動は、子どもにとって世界そのものです。
もし、あなたが筆をとって、静かに呼吸を整えている姿があれば、
それを見て育った子どもは、きっと「心を整える時間」を自然と大切にする人になっていくはずです。
スマホがあってもいい、ゲームもあっていい。
でも、それに流されない「軸」を家庭の中に持つことこそが、
これからの時代を生きる子どもたちに必要な「本当の力」なのかもしれません。
ご覧いただき、ありがとうございました🌱
このブログ記事が、親としてのちょっとした気づきや、日常のヒントになれば嬉しいです。